唐崎の松(からさきのまつ)
霞ヶ池に枝を伸ばす大きな黒松は、兼六園でもっとも有名な松、唐崎の松(からさきのまつ)です。
十三代藩主、前田斉泰(なりやす)が、琵琶湖畔の松の名所、唐崎の松から種を取り寄せて植えた黒松です。
園内の名のある有名な松の多くは赤松ですが、唐崎の松は黒松なのです。
兼六園で一番に雪吊りされる松
唐崎の松は、園内でもっとも大切にされている松で、最初に雪吊りされ、最後に雪吊りがはずされます。
雪吊りされた唐崎の松。
雪吊りは、「ゆきつり」ではなくて、「ゆきづり」と読みます。
雪吊りというのは、積雪で枝が折れないように支柱を立て、縄をめぐらして枝を吊ったものです。
北陸の雪は湿って重いので、枝に雪が積もって折れたり、樹木が倒れてしまわないように雪吊りして樹木を保護するのです。
兼六園のような大きな庭園だけでなく、会社や、一般の家庭でも庭木に雪吊りします。
造園業者や庭師さん達は10月~12月はあちこちヒッパリダコで大忙しです。
兼六園と雪吊り
Photo by 石川県公式 金沢城公園と兼六園
兼六園で雪吊りを行うのは、園庭(えんてい)さん達です。
園庭さんとは、兼六園の専属の庭師で、たった数人の少数精鋭です。
園内には8000本程度の樹木がありますが、そのうち300本ほどが雪吊りされます。
11月初旬~12月初旬頃まで、名のある木、枝ぶりのよい木、老木などが優先されて雪吊りされていきます。
雪吊りは、必ず唐崎の松から行われます。
芯柱(しんばしら)をたてて、そこから綱を張って枝を吊ります。
唐崎の松で使われる芯柱は5本で、そこから800本の綱で枝を吊ります。
いちばん高い芯柱に園庭さんが登り、てっぺんから雪吊り用の縄を投げる、この姿は毎年TV中継され、必ず新聞の一面に載ります。
(唐崎の松の雪吊りが始まると、今年も冬が始まるねぇ!、みたいなノリです)
芯柱に登る園庭さんは、毎年変わります。
新人さんだったりすると、芯柱のてっぺんまで無事に登ることができないこともあり、観光客からガンバレの声援がおこることも。
雪が降る前に300本ほどの雪吊りを終えなければいけないので、園庭さん以外の庭園業者も園内で雪吊りに加わります。
兼六園の園庭さん達は、「兼六園」と書かれた黒いはっぴを着て、地下足袋を履き、はしごや長い枝打ちバサミを持って園内で作業をしています。
(雨の日はカッパで長靴でヘルメット。)
雪吊りは、3月末~4月中ごろにかけて外されます。いちばん最後に外されるのも唐崎の松です。
霞が池の対岸から見た唐崎の松。霞ヶ池に大きく伸びた枝は、園庭さんが小舟に乗って剪定します。
霞が池の鶴と亀
唐崎の松は鶴の姿を模して剪定されています。霞ヶ池の蓬莱島が亀なので、鶴と亀で縁起を担いでいるのです。
元々は七福神山の巣篭りの松(すごもりのまつ)が蓬莱島の亀と対で造られた鶴だったのですが、竹沢御殿が取り壊されて対を成さなくなったため、唐崎松が鶴のように仕立てられたのです。
唐崎の松のトップシークレット
唐崎の松は、兼六園を代表するもっとも有名な松です。
しかし、松は生き物なので寿命がくれば枯れますし、台風や雷で枝や幹が折れるかもしれません。
唐崎の松の幹。霞ヶ池に伸びる幹と上に伸びる幹。どちらも太く力強い。
万が一に備えて、唐崎の松と同じ枝ぶりに仕立てた唐崎の松の2世候補が県内のどこかに用意されている、と言われています。