イグアノドン
イグアノドンは、白亜紀前期のヨーロッパにすんでいた植物食恐竜です。
『世界で最初に発見された恐竜』として有名です。
歯の磨り減りに対応した控えの歯(デンタルバッテリー)を持ち、前肢にスパイク状の親指を持つのが特徴です。
イグアノドン
学名:Iguanodon bernissartensis(イグアノドン・ベルニサルテンシス)
分類:爬虫綱 双弓亜綱 主竜形下綱 恐竜上目 鳥盤目 鳥脚亜目 イグアノドン科
時代:中生代 白亜紀前期
体長:9.3m
発掘地:ベルギー、イギリスなど
学名の意味:イグアナの歯(イグアノ=イグアナの、ドン=歯)
世界で最初に発見された恐竜、イグアノドン
イグアノドンは、1878年にベルギーの炭鉱から完全な姿のものや部分化石を含めて40体以上が発見され、初めて恐竜の全身復元を作ることができるようになった恐竜です。
イグアノドンの生きていた時代は白亜紀前期(パランギニアン~アルビアン:約1億3980万年前~約1億0050万年前)。
最大体長13m、推定体重は3.6t~7.2tです。
ヒトと比べるとこれくらい。
発見とマンテル氏
イグアノドンの発見と命名では、イギリスの医者でアマチュア地質学者のギデオン・アルジャノン・マンテル氏(1790~1852年)が有名です。
1822年、町医者のマンテル氏が夫婦そろって往診に行く途中、妻のメアリー・アンが脇道で不思議な歯を見つけたのが始まりだった、とされています。
自宅に自身が採取した化石を収蔵した博物館をつくるほど熱心だったマンテル氏は、当時の著名な比較解剖学者ウィリアム・バックランド氏とジョルジュ・キュビエ氏に調査依頼。
しかし、中生代の生物の化石とは信じてもらえず、新生代の魚や哺乳類のもの、とする調査結果に納得がいかないマンテル氏は自身で調査。
マンテル氏は1825年に、「中生代に生きていたイグアナのような巨大な爬虫類の化石」との研究結果を発表し「イグアノドン」と命名しました。
(部分的な化石しか見つかっていなかったため、体長140mという巨大なイグアナの姿で復元され、親指スパイクが鼻の角として復元された姿は有名です。)
1878年、ベルギーの炭鉱から40体以上の化石が見つかり、イグアノドンの正確な復元をつくることができるようになりました。
イグアノドンの特徴
イグアノドンの頭骨。
頭骨は長く、口先はクチバシで、口先には歯がありません。
奥歯は木の葉型で縦に2個の歯が並ぶデンタルバッテリーです。
イグアノドンの仲間は、一つの歯槽に歯が縦に2つ並ぶのが特徴で、1本は植物を切り刻む現役の歯、もう1本は控えの歯です。
歯の磨り減りに対応した控えの歯(デンタルバッテリー)を持つのは、イグアノドンの仲間や、ハドロサウルスの仲間(カモノハシ竜)の特徴です。
イグアノドンの仲間は歯槽に(縦に)2つの歯が並んでいますが、ハドロサウルス類は3つの歯が並んでいて、より進化的です。
現役の歯がすり減ると、下から押しあがって生え変わる便利なシステムです。
イグアノドンの親指スパイク
イグアノドンの左手です。
前肢の第一指(親指)が三角形のスパイク状に尖っています。
親指のスパイクの役割は、接近戦の護身用や、植物を掘り起こすために使われたのではないか、とされています。
スパイクが届くほど肉食恐竜に接近されるぐらいなら走って逃げたでしょうから、ワニなんかには日常的に使っていたかもしれません。
スパイクの見せ合いっこで強いオスを決めていたのかも。
スパイクで小突き合いくらいはしたかもしれませんが、ブッ刺し合いとか(痛い!)したのでしょうか?。
成体は四足歩行
親指スパイク以外の指の先はヒヅメ状に丸くなっていて、物をつかむというよりは、体重を支えるようなつくりになっています。
一昔前は二足歩行の姿で描かれることが多かったのですが、現在では幼体は2足歩行、成体になると4足歩行だったとされています。
胸骨がシャモジのような形をしているのも、イグアノドンの仲間の特徴です。
元イグアノドン
イグアノドン・ベルニサルテンシスと同属のイグアノドンで、イグアノドンの華奢な方、旧イグアノドン・アセルフィルデンシスは再調査の結果、別属のマンテリサウルス(Mantellisaurus atherfieldensis)に改名されています。
左がマンテリサウルスで右がイグアノドン。体格がぜんぜん違う。
マンテリサウルスについてはこちら。
マンテリサウルス、元イグアノドンの華奢な方