トロオドン
トロオドンは中生代 後期白亜紀の北アメリカにすんでいた獣脚類です。
恐竜類の中で最も鳥類に近いとされるトロオドン科の代表種で、営巣の方法も鳥類に近い習性を持っていたようです。
トロオドン
学名:Troodon formosus(トロオドン・フォルモスス)
分類:爬虫綱 双弓亜綱 主竜形下綱 恐竜上目 竜盤目 獣脚亜目 トロオドン科 トロオドン亜科
時代:中生代 後期白亜紀
体長:推定2m~3m
発掘地:アメリカ モンタナ州 ティートン群
学名の意味:傷つける歯
アメリカで最初に学名がついた恐竜
トロオドンは中生代 白亜紀後期(カンパニアン~マーストリヒチアン:約8360万年前~約6600万年前)の北アメリカにすんでいた獣脚類です。
地質学者フェルナンド・ハイデンがアメリカのモンタナ州で見つけた1本の恐竜の歯から、1856年に学名が発表されました。今から160年も前、アメリカで最初に学名がつけられた恐竜です。
推定体長2~3m、推定体重40~50kg。
ヒトと比べるとこれくらい。
トロオドンは脳が大きい
トロオドンの頭骨です。
眼窩(がんか)が大きく後頭部が丸いのは鳥類と似た特徴です。
トロオドンは、鳥類以外の恐竜類としては(体重の割に)脳がとても大きく、体重47kgのトロオドンの脳の重さは約27gと推定されています。
食性は不明
トロオドンの歯は小さくとても数が多く、目で見えるほど大きい鋸歯(きょし:歯にある、肉を切るためのギザギザ)があります。
この歯で獲物を傷つけて倒したのだろうということで学名が「傷つける歯」になったのです。
当時は肉食性とされていましたが、鋸歯があまりにも大きいため、植物を食べるための歯ではないか、とされています。
トロオドンの右手。
前肢の指は3本で、手には大きいカギ爪があります。
手に比べて足のカギ爪はとても小さく、獲物を倒すことに使ったかどうか怪しいことも植物食とされる根拠の一つです。
後肢の指は4本。真ん中の指(中指)を長めに描いてますが、薬指とほんと同じ長さです。持ち上がった「恐ろしい爪」がある指は人差し指だよ。
ステノニコサウルスとディノサウロイド
古い図鑑にステノニコサウルス(Stenonychosaurus)として紹介されている恐竜がいます。
ステノニコサウルスはトロオドンと同属であるとして、現在はトロオドンと表記されています。
トロオドンは長らく歯一本しか見つかっていなかったため、その後に見つかって有名になっちゃったステノニコサウルスが図鑑に紹介されていたのです。
ステノニコサウルスが有名になったのはコレ「ディノサウロイド」。
1967年にカナダで新たに見つかったステノニコサウルスの化石を復元した姿から、1982年にデイル・ラッセルとロン・セガンが創造した「ディノサウロイド」。
ヒトと恐竜をデタラメにMIXしたのではなく、進化すれば脳が大きくなり、首が短くなり、バランスを取るために直立姿勢になり・・みたいに体の構造を計算したらヒトそっくりになっちゃった、というシロモノです。
※トロオドンが160年以上も前に命名されたことや、未だに全身化石が見つかっていないことから、書籍の表記によっては(トロオドンという学名を無効として)、トロオドンではなく、ステノニコサウルスと表記されることがあります。
トロオドンの巣と卵
トロオドンは、営巣方法が最もわかっている恐竜のひとつです。
トロオドンの巣の化石です。
これは巣の底側から見た状態の化石で、ひっくり返すと本来の巣。
細かい砂が堆積するような氾濫原に、地面を浅く掘ってふちを少し盛り上げた巣です。
産卵期になるたびに同じ巣を使いまわしたようで、古い巣の上に積み重なって新しい巣が何層も重なっている巣が見つかっています。
巣の中の卵は20個ほどで、長さは15cmほど。
幅の狭い楕円形で、片方の先端が細くなった形をしています。
卵の細い側の先端を地面に突き刺すように、2/3くらいが埋まった状態で産み、全ての卵が巣の中心に向けて少し斜めっています。
卵が少し斜めになっている理由は不明だそうです。
個人的な意見ですが、鳥がよくやるように、巣の上に親が乗ってなるべく卵を中心に寄せようとすると、突き刺さっている分、少し斜めになってしまうのが理由なんじゃないかなーと思います。
福井県立恐竜博物館のトロオドンの復元模型。
トロオドンの幼体の復元模型。
幼体は後肢がしっかりした状態で孵化し、孵化した直後から動き回ることができた、とされています。