化石の定義とは
化石の定義は、「有史以前の地層から産出する、生物の生きていた痕跡」です。
化石と呼ばれるものには、骨や歯のほか、生物の生きていた痕跡(殻、足跡、巣、卵、噛み跡)も含まれます。
もちろん、ウンコも化石になります。
もくじ
化石と骨の違い
これ、↓化石です。
恐竜ティラノサウルスの骨の形をしていますが、骨ではなくて石です。
この殻も。元は殻でしたが、石です。
骨や殻などは、生物が体の中で作った有機物(ゆうきぶつ)。石(鉱物)は無機物(むきぶつ)です。
石に化けると書いて、化石。
日本の学校では、生物が石(鉱物)に置き換わった(化けた)ものが、化石です、と習います。
では、冷凍マンモスは?、琥珀の中の虫は化石なの?、というややこしいことになってしまします。
化石と呼ばれるもの
化石の定義は、「有史以前の地層から産出する、生物の生きていた痕跡」です。
冷凍のマンモスや琥珀は石(鉱物)に置き換わっていませんが、この生物が生きていたことが分かる痕跡なので、化石と呼ばれます。
永久凍土から見つかったマンモスの毛。これも化石です。
琥珀(こはく)は古代の植物の樹脂や樹液です。琥珀も、その樹液に閉じ込められた虫も化石です。
何らかの生物の落し物。生々しいウンコ。これも化石です。
生物痕跡ではないけど化石と呼ばれる場合もあるよ。
古生代よりもっと古い時代(先カンブリア時代)のリップルマーク(波の跡)の化石。
生き物ではありませんが、波の痕も化石と呼ばれます。
石なのに化石と呼ばれないもの
有史時代(ヒトの文明活動が始まった頃~現在まで)の痕跡は、化石とは呼ばれません。
年代でいうと、第四紀 完新世(約1万1700年前~)から現在までが有史とされていますが、年代に関係なくヒトの文明活動による痕跡は化石とは呼ばれず、遺物、遺構、遺跡、人骨、獣骨などと呼ばれます。
約30万~3万年前のネアンデルタール人や、4万年前のホモサピエンスの骨は、骨とも化石人類とも呼ばれます。おおむね化石と呼ばれることが多いです。
エジプトのピラミッドやミイラ(4000年前)、縄文時代(1万5000年前)の矢じり、人骨、動物骨は化石とは呼ばれません。
化石には2パターンある。石化と雄型
化石になるには、死体が分解されたり足跡や痕跡などが消え去る前に、急速に堆積物に埋まる必要があります。
急速に埋まりやすいのは、堆積物がいつも降り積もっている海底や河川、湖沼などです。
肉や柔らかい組織は早々に微生物に分解されて土に返りますが、硬い骨や歯は腐りにくく分解されるのにとっても時間がかかります。
化石には、石化と雄型の2パータンあって、時間をかけて分解されていく過程で、分解された有機物へ堆積物中の鉱物(無機物)が染みこみながら置き換わっていくのが石化(せきか)です。
堆積物に埋まった有機物が溶けてすっかり無くなり、出来た空洞に鉱物がしみこんで満たされると、骨が型取りされてレプリカができます。これが雄型(おがた)です。
化石に色が付いているのはなぜ?
化石が茶褐色だったりネズミ色だったり、真っ黒だったりして色が着いているのは、埋まった場所に含まれる鉱物の種類が違うからです。
鉄が多ければ赤く、炭素が多ければ黒くなります。
ペルニサール炭鉱で見つかったイグアノドンは、炭素の多い岩石に埋まっていたので黒い。
モザイケラトプスの化石。鉄分が多いので赤茶色。
埋まった場所に珪素(けいそ)が多いと、オパールやメノウなどの宝石に置き換わることもあります。
オパールに置き換わってキラキラしたアンモナイト。
化石で年代が分かる理由
相対年代推定法
地層はふつう下から積み重なっていて、上にあるほど新しい地層、下にあるほど古い地層になっているので、おおよその年代を推定できます。
これが「相対年代推定法(そうたいねんだいすいていほう)」です。
たとえば、弥生時代の地層であると判明している地層から、そう離れていない古い地層なら縄文時代、新しい地層なら古墳時代であろう、と推測できます。
しかし、相対年代推定法では、地層の積もった年代を推定はできますが、年代までははっきり分かりません。
絶対年代測定法、放射性年代測定法
絶対年代測定法(ぜったいねんだいそくていほう)、放射性年代測定法(ほうしゃせいねんだいそくていほう)とは、
地層や化石に含まれる岩石の放射性元素(ほうしゃせいげんそ)を調べることで、年代を知る方法です。
放射性元素とは放射線を放出する元素で、ウラン、プルトニウム、セシウムなどが有名です。
実は、窒素や炭素や酸素にも、放射線を放出する原子核を持つ同位体(どういたい)が存在します。
同位体(どういたい)というのは、原子核(中性子+陽子)の数が違う原子のことです。
放射性同位体は原子核が不安定で、時間と共に放射線を放出しながら崩壊していきます。
崩壊によって原子核が半分の量に減る期間を半減期(はんげんき)と言い、半減期は放射性同位体ごとに決まっていることを利用して、年代測定を行うことができます。
炭素14の半減期は5730年です。
炭素(C)を例に挙げましょう。
空気中の炭素は、約99%が6個の陽子と6個の中性子から構成されている炭素12(下画像の上半分)で、
約1%が6個の陽子と7個の中性子から構成される炭素13、
100億分の1%くらいが、6個の陽子と8個の中性子から構成されている炭素14(下画像の下半分)です。
この炭素14が炭素の放射性同位体で、崩壊して窒素14に変化します。
生き物は呼吸時の二酸化炭素を通して、体内で一定量の炭素14を持つ性質があります。
死んで呼吸が止まると炭素14が供給されなくなり、崩壊が始まって窒素14に変化していきます。
炭素14の半減期は5730年です。
炭素14の比率を調べれば、生き物が生きていた年代を概ね知ることができるのです。
ある生物の化石を調べて炭素14が半分に減っていれば、その生物は、約5730年前まで呼吸していた(生きていた)、ということになります。
炭素14が1/4に減っていれば、約1万1460年前まで生きていた、
炭素14が1/8に減っていれば、約1万7190年前まで生きていた、ということになるのです。