新生代の生物 現生哺乳類

アカハネジネズミ、アフリカでNEXCOする哺乳類

アカハネジネズミ

アカハネジネズミはアフリカ東部の砂漠や山地の林にすんでいる小型の哺乳類です。

長い後肢でピョンピョン跳ねて移動し、長い鼻で昆虫や果物を探して食べます。

走って逃げるための逃走経路を作り、パトロールもメンテもこなすというNEXCOみたいな動物です。

英名では「Elephant-Shrew(ゾウ鼻のトガリネズミ)」と呼ばれますが、トガリネズミ(モグラ目)の仲間ではないので現地での呼び名「センギ」と呼ばれることもあります。


photo by :pixabay
アカハネジネズミ
学名:Elephantulus rufescens(エレファントゥルス・ルフェスケンス)
分類:哺乳綱 ハネジネズミ目 ハネジネズミ科
英名:Rufous Elephant-Shrew、Rufous sengi
体長:10~15cm
生息地:アフリカ東部
食べ物:昆虫、トカゲなどの小動物、果物、木の根

ネズミじゃないよ

アカハネジネズミは、アフリカ東部の砂漠や山地の林にすんでいます。

名前に「ネズミ」とつきますが、ネズミ(ネズミ目、げっし目)の仲間ではありません。

トガリネズミ(モグラ目、英語でShrew)に似ていますがモグラの仲間でもありません。

モグラの仲間と違い、目がとても大きいです。

photo by :pixabay

アフリカ大陸にしかすんでいない「ハネジネズミ目」というグループの仲間で、アフリカ大陸が進化の中心だったグループ、アフリカ獣類(ゾウ目、ツチブタ目、ジュゴン目、テンレック目、ハイラックス目)に含まれています。

姿の似ているネズミやトガリネズミよりも、テンレックやツチブタに近い仲間なのです。

ハネジネズミ目の仲間(1科4属16種)はアフリカの広い範囲にすんでいますが、化石種も現生種もアフリカ大陸以外には進出していません。

ハネジネズミ目というグループ名は「長脚目(ちょうきゃくもく)」とも呼ばれます。

大きな目、よく動く長い鼻、前肢よりも後肢がとても長いという特徴を持っていて、小型種はカンガルーのようにピョンピョン飛び跳ねて移動し、大型種は四足歩行で移動します。

小型種でも鼻は長いよ。コミミハネジネズミ。

photo by :pixabay

道路工事する動物

ハネジネズミ目の仲間は、人類以外で「未来を計算してことにあたる唯一の動物」です。

道路工事をする動物として有名で、巣穴へ続く複雑な通路を作る習性があります。

地中に複雑な巣穴をつくるのではなく、地表に通路を作ります。

エサ場へ行くための通路や敵から見つかった時に巣へ逃げ戻るための複雑な通路を作り、邪魔な小石、小枝、葉っぱなどをどかし、毎日パトロールしてきれいに尻尾で掃き、メンテナンスも自分でします。

イチイチ君
イチイチ君
アカハネジネズミの尻尾の先には、髪の毛を梳くのブラシのような形に変形した毛があり、掃き掃除できるようになっています。

隠れていればいいのでは?

天敵から走って逃げる動物はたくさんいますが、わざわざ逃走経路を用意して逃げる動物はハネジネズミだけです。

なぜ道路など作るようになったのでしょう。

ネズミやトガリネズミはじっと隠れて敵をやり過ごしますけど?。

ハネジネズミの仲間は昼行性の動物です。


photo by :pixabay

肉食性の哺乳類の多くは夜行性なので、天敵を避けて昼間に活動するようになったのでしょうが、昼間に捕食動物がいないわけではありません。

昼行性の捕食動物には、ヘビ、大型のトカゲ、ワシやタカなどの鳥がいます。

これらの天敵はじっと隠れている哺乳類以上に身をひそめて待つのが上手く、熱センサーを持っていたり、体の色を変えて姿を消したり、上空から見ていたり・・と、特殊装備の精鋭が多いのです。

特殊装備は恐怖ですが、肉食性の哺乳類ほどアクティブには追ってこないという弱点があるため、複雑に走って逃げ切る方向に進化したのではないでしょうか。

そもそもハネジネズミはネズミやトガリネズミよりもずっと体が大きく、砂漠や疎林で身を隠すというのは難しかったのかもしれません。

ハネジネズミの仲間は小型種でも10cm以上、大型種は40cmくらいありますから。

ミロミガーレとハネジネズミ目の進化

ハネジネズミ目は、アフリカ獣類(ゾウ目、カイギュウ目、ハイラックス目、テンレック目、ツチブタ目)に含まれるグループです。

遺伝子的にはアフリカ獣類の中ではテンレック目とツチブタ目に近縁です。

イチイチ君
イチイチ君
姿の似ているトガリネズミとはヒトとコウモリ以上の差があります。

ハネジネズミの仲間は、現生の種類も化石種もアフリカからしか見つかっていません。

新しい環境へ進出することも食性やスタイルをほぼ変えることもなく、現在に至っています。

現生種で一番小さいハネジネズミ、コミミハネジネズミ。

photo by :pixabay

最古のハネジネズミ目の仲間の化石は、新生代 新第三紀 鮮新世後期(約250万年前)の「ミロミガーレ」です。

ミロミガーレ、ハネジネズミのご先祖様

ミロミガーレは体長20cmほどの大きさで、姿はすでにハネジネズミ。現生の種類と同じく長い後ろ足を持っていました。

※ミロミガーレよりずっと古い地層(新生代 古第三紀 始新世前期:約5500万年前)からもハネジネズミの仲間の特長を持った化石が見つかりました。ミロミガーレは最古ではないようです。

近年、大型のハネジネズミの新種が発見され、テレビを賑わしました。
逃げるのが上手な動物なので、今まで見つからなかったのでしょう。

ハネジネズミの仲間の数は一種増えて(1科4属16種)となりました。

新種発見は喜ばしいことですが、現地の開発が進み、森林の奥地にまで人間が入り込むことができるようになったため、発見されやすくなったという側面があるのです。


広告