古生代の生物

アカントステガ、脊椎動物ヒレから四肢へ

アカントステガは、古生代 デボン紀後期のグリーンランドにすんでいた両生類です。

初期の両生類であり、四足動物(しそくどうぶつ、四肢動物)としてもごく初期の一種です。

四肢はありますが、陸ではなく水の中で暮らしたようです。


アカントステガ
学名:Acanthostega gunnari(アカントステガ・グンナリ)
分類:両生綱 迷歯亜綱 イクチオステガ目
時代:古生代 デボン紀後期
体長:60cm
発掘地:グリーンランド バレンシアスレート層
学名の意味:トゲの鎧

四足動物のさきがけ

アカントステガは、古生代 デボン紀後期(約3億5890万年前)のグリーンランドにすんでいた両生類です。

体長60cmほど、ヒトと比べるとこれくらい。

アカントステガ

学名の意味は「トゲの鎧」。頭骨の眼窩の後ろあたりの骨がトゲのように細長く伸びているところが由来です。

アカントステガの頭骨。
アカントステガ

種小名のグンナリは1933年に頭骨を発見したグンナル氏から。

ヒレではなく四肢と指が化石として発見されていることから、全ての四足動物の根っこの方の系統にいる両生類とされています。

イチイチ君
イチイチ君
アカントステガがYoutuberなら「【両生類】はじめてヒレを脚にしてみた!【8本指】」って動画をUPしていたかもしれない。

アカントステガは一生を水中ですごした、とする説が一般的ですが、歯の特徴から、陸上で捕食できたとする説もあります。

イチイチ君
イチイチ君
水中で獲物を吸い込んで捕食する時に邪魔にならない小さな歯と、水上で獲物に直接噛みついて仕留める大きめの歯を持っています。

水中から陸へ

脊椎動物が水から陸へ生活範囲を広げた理由は諸説ありますが、デボン紀や石炭紀では、生物を分解して再利用する生物の分解サイクルが現生よりも完成されていなかったことが原因の一つではないか、とう説が面白いので紹介します。

デボン紀や石炭紀では、落ち葉や腐った植物を利用する生物が少なかったにもかかわらず、当時森林を作っていたシダ植物(胞子で増える植物)は、枯れた葉を枝ごとボトボト落としていたようです。

イチイチ君
イチイチ君
現在産出されている石油や石炭の多くは、古生代 石炭紀の植物が大量に堆積して地圧や熱で石化したものです。
現生ほどじょうずに分解されていたら、石油も石炭も世界中で利用できるほど産出できなかったかも・・。

植物の落とす枝葉や倒木はいつまでも分解されずに堆積していたため、堆積物で浅くなった水中から顔を出して呼吸するためにヒレが骨太になり、水を掻くヒレよりも堆積物をかき分ける四肢のほうが生きていくのに都合がよかった、とする説です。

アカントステガでは、可動する首と8本指の四肢を持っていました。
四肢があっても手首の関節はまだ持っておらず、陸上で体を支えることはできなかった、とされています。

アカントステガの右腕。
アカントステガ
指の骨はバラバラですが、腕の骨は陸生生物と同じつくりで、上腕骨、橈骨、尺骨があります。

両生類の鰓(エラ)

上記のアカントステガの化石からはわかりませんが、アカントステガの首のあたりには鰓(エラ)があった、とされています。

鰓の痕跡が残る化石が見つかっていて、鰓と肺の両方で呼吸できたことになります。

アカントステガ

現生の両生類では、幼体に鰓がある種類がいるのでウーパールーパーみたいな鰓かな、と思ったのですが、アカントステガのエラは魚の鰓に近いものだったようです。

現生の両生類の鰓。ウーパールーパー(アホロートル)は成体でも鰓があるヘンなやつ。

photo by :pixabay

肉鰭類(ハイギョやスーラカンスなど)から枝分かれして間もないので魚的な鰓(エラ)だったのかもしれません。

なんらかの用途や理由があってウーパールーパみたいなハミ出たエラを獲得する種類が現れたのでしょう。

アカントステガ、描いてみた

魚のようにパックリしたエラがあった、とされていますが、エラ穴を目立たせない体勢で両生類寄りに描いています。
アカントステガ

前肢後肢とも8本指、尻尾にはヒレがあって、歩くよりも泳ぐ方が得意だったようです。


広告