翼竜類 中生代の生物

ダーウィノプテルス、翼竜の卵と子育て

ダーウィノプテルスは、ジュラ紀後中期の中国にすんでいた翼竜類です。

翼竜類の2系統の特徴を持つ「中間種」ミッシングリンクとされていて、雌雄の違いも判明しているという、とても珍しい翼竜類です。

ダーウィノプテルス
ダーウィノプテルス
学名:Darwinopterus modularis(ダーウィノプテルス・モデュラリス)
分類:爬虫綱 双弓亜綱 主竜形下綱 翼竜目 不明
時代:中生代 ジュラ紀後中期
翼開長:約90cm
発掘地:中国 遼寧省 チャオジシャン層
学名の意味:ダーウィンの翼

半々の翼竜

ダーウィノプテルスは、ジュラ紀中期(カロビアン:約1億6610万年前~約1億6350万年前)の中国にすんでいた翼竜類です。

翼開長約70~90cm。推定体重110g~220g。

ヒトと比べるとこれくらい。
ダーウィノプテルス

翼竜類は大きく2系統、ランフォリンクス類とプテロダクティルス類に分けられるのですが、ダーウィノプテルスは両方の特徴を半分づつ持ちます。

また、体内に卵を持つ化石が見つかっていて雌雄の違いも分かっている、たいへん珍しい翼竜です。

学名の由来

ダーウィノプテルスの学名は、イギリスの生物学者、チャールズ・ダーウィンに由来しています。

ご存じ「種の起源」のヒゲおじさん↓。ダーウィン。

photo by :pixabay

ダーウィノプテルスの学名の由来は、ダーウィンの生誕200年、「種の起源」の出版150周年を記念してつけられました。

また、ダーウィノプテルスが、ランフォリンクス類とプテロダクティルス類の両方の特徴を持つミッシングリンク(Missing-link)であることも学名の意味に込められています。

イチイチ君
イチイチ君
ダーウィンは「種の起源」の進化論の中で、「生物Aが生物Cに進化する過程には、生物Aと生物Cの特徴を持つ中間種の生物Bがおるんちゃうか?。おらなおかしいねん。」と論じています。この「中間種」のことを、ミッシングリンク(日本語訳:ミッシングリング、失われた輪)と呼びます。

ミッシングリンク

翼竜類は大きく2系統、原始的なランフォリンクス類と進化型のプテロダクティルス類に分けられます。

ダーウィノプテルスは両方の特徴を半分ずつ持っていて、分類もどちらに含まれるのか議論されています。

ダーウィノプテルスの分類はここらへん。まったくもってド中間。
翼竜の系統図

ダーウィノプテルスの頭骨と上半身は進化的なプテロダクティルス類のよう。
ダーウィノプテルス

プテロダクティルス類のように頚肋骨(けいろっこつ)が無い、長い首、眼窩の前に孔が一つしか無い。

ダーウィノプテルスの下半身は原始的なランフォリンクス類のよう。
ダーウィノプテルス
ランフォリンクス類のように尻尾が長い、短い手の甲、足の第5指(小指)が長い。

ダーウィノプテルスの後ろ足。ハッキリわかる5本指。足の第5指(小指)長いです。
ダーウィノプテルス

比較として、こちらはプテロダクティルスの後ろ足。5本指ですが小指は退化して短くなっています。
ダーウィノプテルス

ランフォリンクス類からプテロダクティルス類への進化への過程がダーウィノプテルスの発見によって解明されるかもしれません。

翼竜類の卵とメス

ダーウィノプテルスのメスと卵の化石です。
ダーウィノプテルス

卵を持った化石であることからこの個体はメス、別に見つかった化石との比較からダーウィノプテルスの雌雄が判明しています。

体内にあった卵が腐敗の途中で排出されたものと推測されています。赤矢印の楕円形が卵。

イチイチ君
イチイチ君
化石化する時に偶然体の近くに卵があった、とも考えられますが、この化石の反対側の片面には体内にあるもう一つの卵の痕跡が残っていました。体内にある卵と外に排出された卵は同じ大きさで、どちらの卵もこの個体の体内にあった卵である、とされています。

化石の卵にはシワが確認されたことから、卵の殻はトカゲやヘビのように柔らかいタイプだったと推測されています。

この化石から少なくとも翼竜類には、卵殻が柔らかい卵を産む種類、体内で卵を2個作ることができた種類がいたことが分かったのです。

イチイチ君
イチイチ君
現生の鳥類は片方の卵巣が退化しているため、体内で一個の卵しか作ることができません。出来た卵を体内に複数留めてから産む種類と、卵ができ次第産む種類がいます。


※翼竜類は硬い殻の卵を産んだとする説もあり、この化石は硬い殻が形成される前の段階で排出された、とする研究者もいます。

翼竜類のメスとオス

オスの頭骨の鼻ヅラにはギザギザがあって、この部分にトサカがあったと推測されています。
ダーウィノプテルス

トサカは骨の板ではなく、軟組織だったとと推測されています。

メスの頭骨にはこのギザギザがないので、トサカは無かったと考えられています。

ダーウィノプテルス

オスのほうが体が一回り大きく、トサカがあったこと、メスに比べて骨盤が小さいことがわかっています。

翼竜類の子育て

翼竜類が子育てしたかどうかは諸説あります。

アルゼンチンで見つかった翼竜類の卵化石には胎児の化石が残っていて、胎児は親とほぼ変わらない姿であることから、翼竜の子どもは生まれてすぐに活動でき、親は子育てをしなかった可能性が高いとされています。

しかし、成長段階がよくわかっているランフォリンクスでは子どもの成長スピードがとても早いことがわかっていて、親の助けを借りなければ成長スピードの早さは説明がつかない、とされています。

翼竜類の種類や生息環境、食べるものによって、子育ての方法が異なっていたのかもしれません。

ダーウィノプテルス、描いてみた

ダーウィノプテルスの一種、ダーウィノプテルス・ロブストデンス(Darwinopterus robustodens)。
ダーウィノプテルス

ロブストデンスはモデュラリスと同じ地層から見つかります。

両種は歯の形が異なり、針みたいに細くとがった歯のモデュラリスに対して、ロブストデンスは歯の真ん中が膨らんで太くなっています。

ダーウィノプテルス

歯の太いロブストデンスの方がより硬い生物(甲虫など)を食べていたとされています。

食べるものが異なることでうまくすみ分けていたのでしょう。


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