新生代の生物 現生哺乳類

ハイラックス、ゾウやジュゴンに近い仲間だけど和名は岩タヌキ

ハイラックス

ハイラックスは、ネコほどの大きさの、ずんぐりむっくりした丸っこい体型の植物食動物です。

見た目はモルモット(ネズミの仲間)やカピバラ(ネズミの仲間)に似ていますが、「ハイラックス目」というグループの仲間で、ゾウやジュゴンに近い動物です。

アフリカ大陸とその周辺にしかいない動物なので、日本には似た動物はいませんでした。
無理やり似た動物を探したのでしょう・・ハイラックスの和名は「岩タヌキ」です。


ケープハイラックス
分類:哺乳網 ハイラックス目 ハイラックス科
学名:Procavia capensis(プロカビア・ケーペンシス)
英名:Cape Hyrax(ケープ ハイラックス)
体長:30~58cm
生息地:アフリカ、西アジアの乾燥した林、岩場

ハイラックスってこんな動物

ハイラックスは、寒い日のネコくらいの大きさの、手足の短い丸っこい動物です。

見た目はモルモット(ネズミの仲間)やカピバラ(ネズミの仲間)に似ていますが、
「ハイラックス目」というグループの仲間です。

「ハイラックス目」は、アフリカ大陸で進化&繁栄してきた哺乳類グループ「アフリカ獣類」の中の1グループで、ゾウやジュゴンに近い植物食動物です。

ケープハイラックスの子ども。上のケープハイラックスの画像は、若いお母さんです。

 
 
こちらは、婆・・ご高齢のマダムです。

お年を召しますと、チャーミングな隙ッ歯が、口元から、ごきげんようなさいます。

ハイラックスは、ゾウと同じく女系家族なのです。

ハイラックスの生息地

ハイラックス目は、1科3属4種が、アフリカ南部、アフリカ東部、西アジアの乾燥した林や岩場にすんでいます。

ハイラックス科の4種は以下です。
・ニシキノボリハイラックス (学名:Dendrohyrax dorsalis)
・ミナミキノボリハイラックス(学名:Dendrihyrax arboreus)
・キボシイワハイラックス  (学名:Heterohyrax brucei)
・ケープハイラックス    (学名:Procavia capensis)
※このページのハイラックスはすべて、ケープハイラックスです。
 
ハイラックス目の仲間は現生ではたった4種ですが、
4000万年ほど前、ウシの仲間がまだ繁栄していなかった頃、
現生のウシの仲間の役割(葉っぱから草まで植物なら何でも食べる植物食動物)を、アフリカ全土だけでなく、ヨーロッパ、アジアで担当していたのです。

絶滅したハイラックスの仲間には、ウシほどの大きさの種類もいました。

ハイラックスのヘンな特徴

ハイラックスは、別の哺乳類グループに少しだけ似ていたり、独特だったり、
ちょっと変わったおかしな特徴がいくつかあります。

・ウマの仲間(奇蹄目)に似た奥歯を持っている。

・背骨(胸椎と腰椎)の数が多い。(哺乳類は20個前後が普通、ハイラックスは30個)

・サル目(霊長類)のように、手足とも5本指で平爪(足の親指だけ、カギ爪)。

・ペッカリー(鯨偶蹄目)のように、背中に臭腺がある。

・ゾウのように上あごの前歯が一生伸び、足の裏が肉質のクッションになっている。

いろんな哺乳類グループの特徴をちょこちょこ持っている特長のせいで、
ハイラックスの仲間がどの哺乳類グループに近いのか、分からなかったのです。

DNAを調べた結果、ゾウ、ジュゴン、ハネジネズミ、ツチブタなど、アフリカで進化した動物グループ(アフリカ獣類)に近い仲間であることが分かりました。

ハイラックスの頭骨を見ると、ゾウに似ていることが分かります。

ハイラックスの頭骨。上あごの前歯が2本、牙のように伸びていますね。

ゾウの頭骨。ゾウさんの立派な牙も、上あごの前歯が伸びたものなのです。

ハイラックスの背中にある黒い闇・・

動物園でハイラックスを見る時、カメラをズームして背中を見てみましょう。

ハイラックスの背中には、毛の乱れた黒い闇が・・。

 
 
黒いのは臭腺です。

哺乳類の持つ臭腺は、仲間に自分をアピールするための匂いを出す器官です。
ネコやイヌ、フェレットなどは肛門の脇にありますし、カモシカは目の近くにあります。

ハイラックスの臭腺は、背中にあります。

岩場にもぐりこんだり木に登る習性から、背中にあったほうが、ニオイをこすりつけやすいのでしょう。

ハイラックスは、木登りじょうず

ハイラックスは、ずんぐりむっくりの見た目とは裏腹に、木登り上手で、垂直の壁も登れます。

ハイラックスは手足とも5本指で、丸っこい指です。
カギ爪は後ろ足の親指だけ。見えるかな?。

手足の裏が肉質のクッションみたいになっているので、
丸い手のひらを吸盤のように使って、よじ登ることができるのです。

いしかわ動物園では、壁をよじ登って脱走しないようにコンクリートの壁がやたら高くて、
ネズミ返しまであります。

壁の近くに木や岩を置いてないのも、じょうずに登って脱走しちゃうからです。

勘違いでついた国名。スペインはハイラックスの島?

現在のスペインの古い呼び名、ヒスパニアとは「ハイラックスの島」という意味です。
(スペインには、ハイラックスはいません。)

当時スペインにやってきたアラビア人が、
アラビアにはいなかった動物「ウサギ」がたくさんいるのを見て、
「あの動物は、自国にいるハイラックス(shaphan:スパハン)の仲間だ。」と勘違い。

そこから、『Ishaphan(アイ、スパハン):ハイラックスの島』と呼び、
のちにスペインを征服したローマ帝国の読みに直されて、『Hispania(ヒスパニア)』と呼ばれるようになったのです。


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