ミクソサウルスは、三畳紀中期のヨーロッパや南中国の海にすんでいた魚竜類です。
原始的な特徴と進化的な特徴がミックスされているところから、「ミクソサウルス」という学名がつけられています。
ミクソサウルス
学名:Mixosaurus sp.(ミクソサウルスの一種)
分類:爬虫綱 双弓亜綱 広弓下網 魚竜上目 ミクソサウルス科
時代:中生代 三畳紀中期
体長:約1m
発掘地:中国 貴州省
学名の意味:ミックスされたトカゲ
三畳紀の小さい魚竜
ミクソサウルスは三畳紀中期(アニシアン~ラディニアン:約2億4720万年前~約2億3700万年前)のイタリアやスイス、南中国の海にすんでいた魚竜類(ぎょりゅうるい)です。
体長は約1mほどで、ヒトと比べるとこれくらい。
かなり小さい魚竜類ですが、タイからはもっと小さい魚竜類の化石が見つかっています。
学名の由来
生きていた時代が三畳紀中頃と古く、尻尾がイルカ型ではないニョロリとした原始的な体形の魚竜類であるにもかかわらず、前肢が後肢よりもはるかに大きいという、ジュラ紀の進化型の魚竜類と同じ特徴をすでに持っている、
ということから「(原始的な特徴と進化型の特徴が)混ざった(ミックスされた)トカゲ」、という学名がつけられました。
ミクソサウルスの前肢(前ヒレ)と後肢(後ろヒレ)。
後肢が明らかに小さいです。
ミクソサウルスよりも原始的なウタツサウルスでは、前肢後肢とも大きさはほぼ同じです。 続きを見る
ウタツサウルス、最古の魚竜類
ステノプテリギウスやイクチオサウルスなどの進化した魚竜類では、後肢がかなり小さくなっています。 続きを見る
ステノプテリギウスの妊婦さんと子ども
ミクソサウルスは前肢と後肢は進化型なのに、尻尾(尾ヒレ)はコレ。ニョロリと長い。
下方に少し曲がって伸びる尻尾で、イルカのような三日月形の尻尾は持っていませんでした。

背ビレの有無
イタリアで見つかったミクソサウルスの化石には、背中に背ビレに見える三角形の輪郭と、尻尾の付け根にフルークと呼ばれる三角形のヒレの輪郭が見えるものがあります。
そのため、「ミクソサウルスには小さな背ビレとフルークがあった」とされていましたが、近年、フルークはあったが背ビレは無かった、と訂正されています。

進化型の魚竜類やイルカやシャチの背中にある背ビレは、高速で泳ぐときに体がブレないようにバランスを保つ役割があります。
ミクソサウルスは、尻尾の形や体形からあまり早く泳ぐことはできなかった、とされているので、背ビレが無かったとしても問題なかったのかもしれません。
すんでいた場所も外洋ではなく沿岸や浅瀬だったとされているので矛盾はしていません。

魚竜の鞏膜輪
ミクソサウルスの頭骨です。
眼窩の中にある円形の骨は鞏膜輪(強膜輪:きょうまくりん)。
魚竜類は鼻孔(鼻の穴)が眼窩の前にあります。

恐竜や鳥類にもある鞏膜輪(強膜輪:きょうまくりん)は、魚竜類にもあります。
恐竜類の鞏膜輪はウロコのような小さい骨が円形に並んで見えますが、ミクソサウルスの鞏膜輪はつるんとして見えます。
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オルニトミムス、鳥もどき
魚や鳥類のつるんとした鞏膜輪に似ているな~と思って拡大してよく見たら、うっすら小さい骨が並んでいるようなスジが見えます。
鞏膜輪の拡大。
化石化の際につるんとしたのか、元々つるんとしたものなのか不明です。