スクレロモクルスは今から2億年ほど前(三畳紀後期)のイギリスにすんでいた爬虫類で、恐竜類と翼竜類に共通する祖先に近い仲間のうち、少し翼竜寄りの仲間ではないか、とされています。
スクレロモクルス
学名:Scleromochlus taylori(スクレロモクルス・タイレリ)
分類:爬虫綱 双弓亜綱 主竜形下綱 分類不明
時代:中生代 三畳紀後期
体長:約20cm
発掘地:イギリス
学名の意味:硬い梃(てこ)
翼竜類の祖先系統かも
スクレロモクルスは三畳紀後期の初め頃(カーニアン:約2億3700万年前~約2億2700万年前)のイギリスにすんでいた爬虫類です。
体長は20cmくらいで、ゲットするとこんな感じ。
トカゲチックですが、スクレロモクルスこそ翼竜類の祖先に近い爬虫類ではないか、とされています。
翼もクチバシもありませんけどね。
翼竜類の外側下顎骨窓
スクレロモクルスの分類は推定でここらへん。
翼もないし、クチバシもないのに翼竜類の祖先に近いとされる理由は、下アゴの孔です。
近年、原始的な翼竜類の下アゴに、恐竜類が持っている「外側下顎骨窓(がいそくかがくこつそう、そとがわかがくこつそう)」という孔があることが判明し、「恐竜類と翼竜類は共通する祖先から枝分かれした近い系統」であることが分かったのです。
獣脚類、カルカロドントサウルスの外側下顎骨窓。
噛むための筋肉を収める孔なので、噛む力の強い恐竜には大きめの孔があります。
そこそこ原始的な翼竜類、ランフォリンクスの頭骨。
外側下顎骨窓はどこ?、スジすら見えませんね。
近年まで「翼竜類には外側下顎骨窓が無い。よって恐竜類とは別系統」とされていた理由はコレなのです。
翼竜類の骨はとても華奢で化石になりにくい上、下アゴに高さが無いのでわからなかったのです。
恐竜類の祖先に近いとされる恐竜形類(ラゴスクスなど)よりも少し古い系統の爬虫類が、翼竜類と恐竜類の共通の祖先である可能性が高く、ちょうどその系統がスクレロモクルスやシャロビプテリクスにあたります。
シャロビプテリクスは三畳紀初期の爬虫類で、大きな皮膜で滑空していたことがわかっていますが、皮膜は後肢にありました。
シャロビプテリクスに近縁であるスクレロモクルスにも皮膜があった可能性が指摘されていますが、化石としては見つかっていません。
翼竜類の祖先は見つかっていない
今のところ翼竜類の祖先は見つかっていません。
翼竜類の祖先は滑空する生物だった、と推測されています。
スクレロモクルスと近い時代か少し後の時代、現在見つかっている最古の翼竜類エウディモルフォドン(三畳紀後期 ノーリアン:約2億2700万年前~約2億0850万年前)はすでに翼を持ち、空を飛んでいました。
しかし、滑空する生物からエウディモルフォドンのように翼を持つに至るまでの中間の生物は見つかっておらず、翼竜類の祖先も、どのように空を飛ぶにいたったのかも不明なのです。
スクレロモクルスは翼竜類の祖先から縁遠い、とする説もありますが、翼竜類の祖先はスクレロモクルスに似たような姿だったのでしょう。
なぜ飛ぶようになった?
スクレロモクルスを描いてみました。
スクレロモクルスの腕や指は短く、翼竜のような長い腕とは似ていません。
スクレロモクルスは皮膜を使って滑空していた、という説がありますが、今のところ化石から皮膜は見つかっていないので、皮膜無しで描いています。
例えば、ニホントカゲやカナヘビを捕まえようとするとチョロチョロと走って逃げますが、樹上や石垣などの高所に追い詰めると、落ちて逃げようとします。
翼竜類の祖先も、樹木間を長い後肢で跳ねて逃げるうち、滑空する皮膜が発達したのかもしれません。