恐竜・鳥脚亜目 中生代の生物

マイアサウラと恐竜子育て説

マイアサウラは白亜紀紀後期の北アメリカにすんでいた大型のハロドサウルス類(カモノハシ恐竜)です。

ハドロサウルス類の仲間のうち、地味な突起や目立たないトサカを持つグループ「ハドロサウルス科」に含まれ、眉間(みけん:目と目の間)に低いトサカがあります。

マイアサウラ
マイアサウラ(幼体)
学名:Maiasaura peeblesorum(マイアサウラ・ペーブレソルム)
分類:爬虫綱 双弓亜綱 主竜形下綱 恐竜上目 鳥盤目 鳥脚亜目 ハドロサウルス科
時代:中生代 白亜紀後期
体長:成体8~9m
発掘地:アメリカ モンタナ州
学名の意味:良いお母さんトカゲ

恐竜子育て説のきっかけとなった恐竜

マイアサウラは白亜紀紀後期(カンパニアン:約8360万年前~約7210万年前)の北アメリカにすんでいたハドロサウルス類です。

最大体長9m、推定体重900kg~2.3t。

ヒトと比べるとこれくらい。
マイアサウラ

マイアサウラは「恐竜が子育てをした説」のきっかけになった恐竜で、イラストや復元図では親が巣の幼体にエサを運んでいる様子が描かれることが多いです。

学名の由来も子育て説から

マイアサウラは、1978年にアメリカで直径約2mのすり鉢状の巣と、巣の中や外に15体の幼体がみつかったのが最初の発見です。

学名の由来は、恐竜も子育てしたんだ、すごいよね!との推測から、マイア=良いお母さん、サウラ=サウルスの女性名詞形、とされました。

なぜ巣と幼体の化石から子育てしたことが推測されるかというと、以下。

①巣の中の卵の殻が粉々に砕けていた
②幼体が体長1mくらいに成長していた
③幼体がすり減った歯を持っていた

上記から、幼体は孵化してからしばらくは巣にとどまっていた(巣の中の卵の殻が砕けているから)。
幼体が成長しているということは、親恐竜がエサを運んで子育てをした、という説が発表されました。

どんな巣だった?

マイアサウラの巣は直径2mくらいのすり鉢状で、成体の体長と同じくらいの7~8mの間隔をあけて、複数の巣がみつかっています。

たくさんの巣が見つかること、地層の上下に巣の化石が重なって見つかっていることから、繁殖期になるたびに同じ営巣地に集まり、集団営巣していたと考えられています。

巣の中には20~30個の卵が産み付けられ、巣の中からは植物の化石がたくさん見つかっています。

この植物は、親が幼体に運んだエサであるとする説もありますが、卵を産んだ後に植物をかぶせ、植物が発酵する熱や地熱を利用して卵を孵(かえ)していたとする説が有力です。

卵を産んで植物をかぶせた後、親は巣をほったらかしにしたのか、ワニのように巣の側で見守っていたのかはわかっていません。

親が卵の上に乗って温めたという説は、親が巨体であること、卵の数が多すぎることから否定されています。

子育て説の真偽

現在では、マイアサウラが子育てしたかどうかはわからない、とされています。

子育てをした可能性はありますが、しなかった可能性もあるのです。

巣の中には卵の殻が粉々に砕けて散乱していたことから、幼体は孵化してしばらくは巣にとどまっていたことは間違いないようですが、
親がエサを運んで保護したかどうかは研究者によって意見が違います。

子育てした説、しなかった説、それぞれに根拠があります。どっちだと思う?。

子育てした説

親がエサを運んで子育てした、とする説。

巣で見つかった幼体の化石は、後肢の骨が完全に骨化しておらず、歯がすり減っていました。

後肢がしっかりするまで歩けなかったのに歯がすり減っていた、という事実から、「歩くことができない幼体が自立してエサを採っていたとは考えにくい」として、親がエサを与えて育てたのだろう、とする説です。

この説だと、幼体は巣の中で親がエサを運んでくるのを待っていた、ということになります。

子育てした可能性は低いとする説

親が子育てした可能性は低いとする説とは。

ニワトリの幼体であるヒヨコは、後肢が骨化していなくても孵化直後から歩くことができ、エサを探すことができます。

後肢が完全に骨化していなくても孵化直後から自立できた可能性もあるのです。

マイアサウラの幼体も孵化した直後から自立することができ、自力でエサを採食して巣に戻ってくる、を繰り返していた可能性がある、ということが根拠です。

この説の場合、親は卵を産んだ後に巣を放置したか、孵化するまでの間しか保護せず、幼体だけが巣に残って集団でくらした、ということになります。

集団営巣したことが分かっていることから、巣の周辺にはたくさんの成体がいて捕食者が簡単に近寄れなかったため、親が保護しなくても安全だった、と考えることもできます。

イチイチ君
イチイチ君
子育てしたのかしなかったのか、もしかしたら考えもつかないような方法を取っていたのか、いずれ証拠となる化石が見つかるかもしれません。

幼体の成長スピードからわかること

マイアサウラを含むハドロサウルス類の卵の形は球形で、大きさは直径20cmくらい。

中国産ハドロサウルス類の卵。

孵化したばかりの幼体は50cm程度、体長1m程度になるまで巣にとどまっていたようです。

マイアサウラの幼体。

20個~30個と、卵の数が多いことから、たくさん産んで運よく生き残った個体が成長する繁殖方法をとっていたと考えられています。

幼体の成長スピードはワニよりも鳥に似ていて、
繁殖可能になる年齢までに急激に成長し、捕食者に襲われない大きさになるとゆっくり成長し続けたと考えられています。

福井県立恐竜博物館の資料によると

孵化してから3年で繁殖可能になり、成長期には1年間に700kgも体重が増え、
8歳くらいまでには体重2.3tになったと推定されています。

マイアサウラの一種。

イチイチ君
イチイチ君
幼体の生存率を計算した研究では、孵化から1年後まで生き残ることができるのは10%、成体になることができるのはたった1%くらいだったとされています。


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